(1)規格の生い立ち
防錆包装規格の一大教書ともいうべきMIL(Mi1itary)規格は、米国における軍需品の防 錆包装に関して規定したものです。その歴史的背景は、米軍が第2次世界大戦中、兵器や軍需品の極東への海上輸送や、高温多湿な現地における保管で、米国では経験したことのない激しい発錆に悩まされ、当時シェル石油が開発した気化性防錆剤ダイカン(アドパック 鉄用塗工タイプに相当)の採用を含む防錆包装の研究を始めたことによります。
このMIL規格を基準に、昭和34年わが国で初めて気化性防錆剤および気化性防錆紙に関 する日本工業規格JIS-Z-1519(気化性サビ止メ材)が制定されました。これはいずれも
気化性防錆剤としてはダイカンのみを限定したものです。
その後、ダイカン以外の気化性防錆剤が開発普及されるにしたがい、昭和48年、
平成6年改訂が行われ、JIS-Z-1535(気化性さび止め紙)が公布され現在に至っています。
(2)JlS-Z-1535(気化性さび止め紙)の規格概要
JIS規格に規定している気化性さび止め紙として必要な特性は、
◎気化性さび止め性・・・・・・・・・鉄鋼に対する気化性防錆効果があること
◎ばく露後の気化性さび止め性・・・・鉄鋼対する気化性防錆効果に持続性があること
◎鉄鋼以外の金属に対する使用可否・・銅、アルミに対して腐食のないこと
等があります。この他にポリエチレン加工紙との共存性、紙力強度が基本的に必要な特 性になっています。なお、上記ハ項については、銅に対する非接触時の影響およびアルミニウムに対する接触時の影響をテストし、防錆紙が鉄鋼にだけ使用できる限定用(2種)か、それとも全般
用(1種)かを判定するものです。しかし、試験条件や判定基準がゆるやかなため、 実際上はほとんどすべての防錆紙がこの規格の全般用(1種)に合格することになり、
現実性に乏しいと言われています。
このことからJIS規格は主として鉄鋼製品に使用される気化性防錆紙に適用される規格
であると言えます。 |